日記

羅臼岳~7年越しの晴天
2021.05.27

羅臼町(らうすちょう)にて7年越しの羅臼岳(らうすだけ)の晴天を待ちわびること6日。ようやく、その朝がきた。
当初の計画では、7年前の分も味わいたく、1泊2日で羅臼岳に登る予定だったが、明後日から再び雨天が続くため、1日で斜里町(しゃりちょう)ウトロ側へ下山することに切り替えた。そのため出発は早く、5時半前となった。

あと数日で6月。ヒグマはすでに活発に動いている。自然保護官の方からはヒグマも個体差があるので、この時期はこの辺りが多く出る、などと特定することは難しいと話していた。ヒグマたちにとっては、知床半島はホームゲレンデ、こちらがよそ者だ。運もあるだろうが、遭遇するリスクをできるだけ押さえられるかは自分自身にかかっている。
さらに、計画を変更したことで、山中でヒグマと遭遇するリスクが少し減った。正直、山中でのテント泊まりには不安があった。

5時半過ぎに羅臼町のビジターセンターを出発。今年はまだこちら側から登ったという登山者の情報は無いそうで、残雪の状態や登山道、熊の目撃情報等も皆無と聞いた。
久しぶりの快晴。浮き立つ心を押さえつつ、初めてのルート、久しぶりの雪のない登山道を一歩一歩少し緊張しながら進む。
チャリンチャリン、じゃらじゃらと鈴の音に合わせ、「ほぉーわ!」とかん高い声をあげる。途中の立ち木に真新し爪痕。緊張が高まるが、結局その後は熊の痕跡も姿もなかった。時々、笹の中からガサッと音を立て逃げていくエゾシカと遭遇するだけとなった。

出発から2時間半で泊場に到着。見上げる先には屏風岩と大雪渓の急斜面、そしてハイマツが生い茂る山頂が見える。
泊場からは雪道となった。見えない夏道を外さないように、適宜地図で確認しながら、屏風岩直下まで進んだ。近づくと触らなくとも、岩の断面や質感から、とても固そうだ。
1ヶ月ぶりにアイゼン歩行、急斜面に一歩一歩蹴り込み登る。

浦河町(うらかわちょう)から440㎞以上歩いてきたとはいえ、登山は1ヶ月ぶり。これまでも長く登山から離れると、登山に必要な筋力が低下し、感覚を取り戻すのに時間がかかることがあった。今回もそんな感じだ。
この時すでに、自分のイメージ通りの動きができていなかった。そのため、いつも以上に疲れている感覚があった。きっと明日は筋肉痛が酷いだろう。

息も絶え絶え、休み休み、2時間ほどで主稜線まで登りきたった。前回と季節は違うが、主稜線から見れる景色は初めて。ハイマツが生い茂り、知床半島を2つの海が挟み込んでいる。右が根室海峡、左がオホーツク海。
さらに30分、ゴツゴツの岩をよじ登り、雪渓の急斜面を2回越えて、出発から5時間、7年ぶりの羅臼岳に登頂した。

初めて見る知床半島、知床連山、海が足元から目の前へと広がった。風も穏やか、青空も日差しも、展望も申し分なし!
山頂で昼食を食べながら、雄大な知床の今の表情を眺めた。
12時前に名残惜しく山頂を出発。所々の雪渓を尻滑りをしながら、あっという間にウトロ側の岩尾別登山口へと下山した。
これで、登頂数は大台の290座。残り11座。7年前はここが99座目。ゴールへまっしぐらという感じだったが、今回はそんな感じではない。まだまだ先がある。今はこれまで通り、目の前一座に集中することを変わらずに続けていく。

下山もヒグマとの遭遇はなかった。汗を流すべく、下山は7年前と同じように、岩尾別登山口の地の涯(ちのはて)温泉で、汗を流した。
さっぱり、清々しい新緑の中、7年前の自分を振り返っていた。そして、7年が経過したが、前回の分も羅臼岳を味わえた。
少しずつ遠くなる羅臼岳、知床の山々、見えなくなる最後まで何度も振り返っては、満足の笑顔がこぼれた。

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