日記

緊迫の日高山脈主稜線へ
2021.04.22

昨晩は緊張からか熟睡ができなかった。林道終点でのテント泊。冬眠明けのヒグマの存在も気になっていたから、なおさらだろう。
今日から1週間は標高1500m以上でのイグルー(雪のブロックを積み上げた簡易シェルター)生活。初めての経験ばかりで、気持ちを静めたくとも静まらない。

5時半前に北戸蔦別岳(きたとったべつだけ)登山口を出発。上空は予報通りに風が強そうだ。午後から風はおさまる予報なので、それを信じるしかない。

二ノ沢出合いから夏道を外れ、1533mのピークへと直登する急斜面の尾根へと入った。標高差700mの一気登りだ。
荷もかなりの重量のため、ペースはゆっくり一定だが、足元に注意を払いながら、2時間半でこの縦走で一番長い登りが終わった。

森林限界から上は、まだまだ風が弱まる気配はなく、山肌を雪煙上げながらものすごい風が抜けていく。そして、風で磨かれた、白く輝く主稜線が間近に迫ってきた。
そこから、主稜線まで1時間半程で合流。北戸蔦別岳は山頂直下をトラバースして、戸蔦別岳へ向かった。戸蔦別岳との間は岩稜となり、一歩も気が抜けない。「この先、細く尖った岩稜をいくつも越えて行かなければならないのだな…これはやっぱりそう簡単ではなそうだ」と緊張と不安がこの日一番高まった。

さらに1時間ほどで、戸蔦別岳を越えて、目前に縦走一座目となる幌尻岳(ぽろしりだけ)が太陽の日差しを浴び輝いていた。その姿は優しさも感じられ、神々しくもあった。
幌尻岳は主稜線から外れているため、戸蔦別岳直下のビバーク地にイグルーを作り、荷の半分以上をこの中に置いて、しばしの間軽くなったバックパックを背負い山頂へ向かった。

左手には眼下に七つ沼カール、遠くには明日以降縦走をして行くカムイエクウチカウシ山までの長い道のりが見えていた。
「長いなぁ~」と思ってしまう自分に、今は幌尻岳に集中するよう、気持ちを引き締め、肩までの急斜面を緊張した足取りで登りきった。

日中溶けた雪が凍りつきキラキラと輝く山頂までの緩やかな道のりに感動。15時45分、2014年以来となる日高山脈縦走一座目の幌尻岳に登頂した。
「やった~!」喜びとともに、「まだまだ先は長い」という気持ちが同時にあった。短い間だが山頂からの景色を堪能。前回は脚の痛みで全く余裕がなかったため、これが初めてのような感じだ。

眼下の美しいカールの先に、どこまでも続く日高山脈主稜線の眺め、「さぁ始まった!明日からが本番だ」と気を引き締め、ビバーク地の戸蔦別岳へと急ぎ戻った。
夕日が赤く幌尻岳を染め、明日は今日よりも穏やかな1日となりそうだ。
主稜線1泊目のイグルーは雪質も良く頑丈で快適な空間を作ることができた。しかし、夜中に風が強くなり、隙間から吹き込む風雪で何度も起きてしまい、熟睡できた時間は意外と少なくなってしまった。

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