日記

薪歩荷
2020.11.06

当初、暑寒別岳(しょかんべつだけ)に登る日を今日に予定していた。しかし、天気予報が予想通りには進まず、延期となった。明日から再び天気が下り坂となるため、せっかくいただいた薪を濡らさずに避難小屋まで運ぶために、日帰りで歩荷する事にした。
重さは飲料水や食料などで20キロほどにはなったが、中4日も休んだ体にはちょうどいい運動になりそうだ。

昨日までの強い風は朝から弱く、比較的暖かい。肝心の暑寒別岳には雲がかかり、麓とは明らかに状況が違った。
避難小屋までは舗装された林道が街から続いているため、普通は車で運ぶ。一瞬、山岳会の方に避難小屋まで薪だけを車で運び上げてもらいたいな…と頭を過ったが、薪だけを避難小屋まで歩荷する事は初めてのこと、きっといい経験にもなるし、薪のありがたみも違ってくるだろうと思いなおした。また、避難小屋の内部や雪の状態も事前に確認できるため、なおさら、自ら歩いて行くことに意味があった。

宿泊先から片道16キロ。帰りは空荷ではあるが往復32キロを歩く。ほぼ海抜0メートルから、標高480メートルの避難小屋まで、田畑を抜けて緩やかに続く林道を淡々と歩き続けた。
事前に役場の方との話で、今年は暑寒別岳も他の地域と同様に羆(ひぐま)との遭遇が多いと聞いていた。林道に入ってから、排泄物や足跡などは一切なかったが、気休めの鈴をカランカランチャリンチャリンと鳴らし、手元にはいつでも噴射できるように、熊撃退スプレーを常備した。

緊張感を途切れさせずに、出発から3時間半で無事避難小屋に到着。
ブロック造りの頑丈な造りで、扉も重厚な感じだ。中はとてもきれいに管理されていた。早速、薪を入り口下に積み重ね、利用ノートに薪を小屋利用時に使うために歩荷してきたこと、他の登山者が極力利用しないようにと協力のお願いを書き記した。
外のトイレ、登山口の積雪量、水場の確認、小屋内部の掃除をして来た道を引き返した。

帰り道で、厚い雲がかかる暑寒別岳を見て、「どうか登る日は穏やかな1日でありますように」と願った。
その先で、上って来た時は無かった羆の大きな排泄物を発見。まだ新しい感じだった。さらに進むと、舗装路の上を歩いた羆の足跡がくっきりと残っていた。
わずかな差で、すれ違っていたことに、一瞬背筋が凍った。
その後は、麓まで駆け足で下山。日が暮れる前に宿泊先へと無事に戻った。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです