日記

最長55
2020.10.19

この旅最長の距離を歩く朝がきた。その距離は55キロ。百名山、2百名山の時ならば日常的な距離だったが、今回は平均30キロのため、かなり長く感じるだろう。今の季節、歩いていては真っ暗になってしまう距離だ。

朝靄が留寿都(るすつ)の山々を包み、低地には雲海が広がる。気温一桁に冷え込んだ空気を切り裂くように走り出した。額に汗がにじむが、吐く息は白い。
苫小牧方面に抜ける国道230号線は、早朝からたくさんの大型車両が猛スピードで走り去っていく。その度にヒヤリと肝を冷やした。なぜなら、今日のルートは歩道がほとんど無いからだ。路肩は本州に比べれば幅は広いが、車の速度が高速道路並みのため、風圧や走行音が全然違う。また、見通しの良い直線道路が多いため、前の車を追い越しする車の数もかなり多い。何度も身の危険感じる瞬間があった。

片時も気を抜けない歩きと走りが続く中、喜茂別町(きもべつちょう)鈴川を走っていると、背後に雲に隠れた後方羊蹄山(しりべつやま)と形がそっくりな尻別岳(しりべつだけ)がしばらくの間見送ってくれた。まるで親子、夫婦のように思えた。

紅葉が最盛期を迎えた標高510メートルの広島峠を越えて4キロほど進むと、今日のルート上で唯一の飲食ができる「きのこ王国」に11時過ぎに到着した。
ほぼ中間点に位置し、6年前も同じ行程を歩き、同じ場所でランチをとった。
日本一みそ汁が飲まれているきのこ王国。その名の通り旧大滝村の特産のきのこをふんだんに使ったメニューが豊富だ。さらに、お土産屋もあり、たくさんの観光客で店内は賑わっていた。
メニューはプレミアムきのこ汁ときのこご飯、きのことワカサギの天ぷら。少し食べ過ぎではあったが、1時間程のランチタイムで、2つ目の峠へと再び走り出した。

支笏湖(しこつこ)畔の宿までは28キロ。集中力を高めて、走りつづけた。
午後2時過ぎにようやく湖畔に出た。そこからは立派な歩道が続き、モラップの宿までは安心して歩けることができた。
フルマラソンと同じ42キロまで走ったが、残り13キロは翌日の事を考えて歩いた。支笏湖は木々で遮られあまり見えなかったが、紅葉した沿道の先に明日登る予定の風不死岳(ふっぷしだけ)がそびえていた。あまり標高差がないように見えたが、湖畔からは800メートル以上の標高差がある。

変わらぬ湖畔沿いの道、50キロを過ぎた辺りから大分足底の痛みが出てきて、明日の風不死岳から樽前山へと縦走ルートを変更した方がいいのではと弱気になる場面もあった。
日没とほぼ同時、なんとか暗くなる前にモラップの山荘に到着する事ができた。
今朝は走り・歩ききれるか不安に思っていたが、久しぶりに「まだまだいける!俺、やればできる!」と自信を取り戻していた。
宿でシャワーを浴びて、食事を食べて一息入れると再び元気が戻り、明日は予定通りに登ることを決意した。そして、8時前には爆睡だった。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです