日記

秋田県最後の山
2020.09.06

秋田県最後となる山、森吉山(もりよしざん)に登る朝は静かに訪れた。
夜が明ける前から出発準備を始め、5時に朝食を頂き、6時過ぎに標高500メートルのおしゃれな宿から、優しい表情の女将さんに見送られ、出発した。

標高860メートルのブナ帯登山口へと林道を登る。ほとんどの登山者が利用する阿仁ゴンドラはまだ動き出してはいない。
久しぶりの雲一つ無い快晴に誘われて、たくさんの登山者が8時45分の営業開始から、1160メートルの頂上駅まで上って来ることだろう。
7時20分にブナ帯登山口を出発。朝露で濡れたブナ林が、差し込む日差しで輝く中を登って行く。途中から長い石段が続き、ゴンドラ頂上駅まであとひと登りか~と思っていたら、すでに着いていた。8時に頂上駅に到着。まだ、ゴンドラが動き出してはいないため静かだ。少し上の展望台からは懐かしい山が2つ、鳥海山と月山が見えた。
自然と疲れも忘れ、気持ちが上がっていく。

主稜線に合流すると、青森県の山々が、これまでで一番はっきりと見えた。ここに来てようやく、青森県が近づいてきたこと、東北ももうすぐ終わることを実感していた。先の山のことは、森吉山に登頂させてもらい、無事下山してから考えようと気持ちを切り替え、懐かしい景色を見上げながら山頂へと向かった。

たおやかなゆったりとした山容。アオモリトドマツと小さな湿原の間を抜けながら、標高を上げていく。そして、9時12分、272座目森吉山山頂に到着した。5年ぶり3度目の登頂となった。
楽しみにしていた景色がもう一つ。山頂から、5年前に歩いた山人平(やまびとだいら)からヒバクラ岳方面の眺めだ。前回はそこを抜けて、赤水沢渓谷を遡行し、玉川温泉へと抜けた。あの日を懐かしみながら、山頂から少し離れた岩に腰を下ろし、一人思いにふけった。

山頂からの声が少しずつ賑やかになってきたので振り返ってみると、登頂の時は4人しか居なかった山頂には30人以上の登山者の姿があった。2時間程山頂で過ごし、たくさんの登山者から「頑張って~気をつけて!」と見送られ、旧森吉スキー場へと下山を開始。
途中、森吉神社に立ち寄り、3度目の登頂と素晴らしいコンディションに恵まれたことの感謝を伝えた。
最近、以前よりも下手くそになってきた法螺貝を数回、森吉山に向かって吹き鳴らした。

午後1時、無事に下山。秋田県最後となる山が終わった。
秋田県といえば、熊が多いと聞く。マタギの里で一度も出会わないのは運が良かったのだろうが、少し寂しさもあった。
林道を歩きながら、こんなに立派なブナ林なら、木に登ってブナの実でも食べているんじゃないかな~と見上げていたら…ガサガサガサ、ザザー!まさかの本当にブナの木を登っていて、こちらに気づいた熊が勢いよく、お尻を下に木に抱きつきながら滑り下り、一目散に逃げていった。熊との距離は20メートルほど。
こちらが先に気づいていればと、いつもは会いたくないからビクビクしながら歩いているのに、この時は後悔する自分がいた。でも、熊には山では会いたくないのは変わらぬ本心だ。
熊を間近でみたい方はくま牧場へ。

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