日記

秋田駒ヶ岳
2020.08.26

この旅の原動力となった山はいくつかある。その中でも、東北で強く記憶に残るのが、先日登った焼石岳と、これから登る秋田駒ヶ岳と言えるだろう。
一晩だけではもったいない!と思わずにはいらなかった乳頭温泉黒湯の宿を、女将さんたちに見送られ、笹森山登山口へと向かった。

熊が出てきそうな雰囲気漂うスキー場跡地を、強い日差しを背に登った。八幡平から離れるにつれて、日中の気温が高くなっているのを感じる。具体的な数字は分からないが、今日は昨日までとは空気が違う感じだ。
スキー場跡地を抜けるとブナ林となり、少しの間暑さをしのげた。しかし、森林限界を迎えると、笹とアザミが茂る登り基調のトラバースで、暑さに加えて、立派に成長したアザミからの容赦ない攻撃で、肌は赤くなった。初っぱなからお疲れモードだ。

天気も良くコンディションも抜群なのに、待望の秋田駒ヶ岳最高峰、男女岳(おなめだけ)が近づく程に、疲労はみるみる蓄積されていく。
前回、縦走した主稜線に合流してからも、気持ちは高揚しているのだが…。身体がついてこない。焼森(やきもり)で強風に飛ばされそうになりながら、歩を進めた5年前の光景を思い出した。

そして、今回は咲き終わりのコマクサを見つけることが出来た。横岳から通称「ムーミン谷」を見下ろし、深い火口の中を歩く人影に「あそこを歩いたらきっと気持ちがいいんだろうな~」と思ったが、一昨日の三ツ石山へとルート変更した時のような余力はすでになかった。きびすを返して、登山者でにぎわう阿弥陀池へと下りた。

最高峰男女岳はもう目と鼻の先。5年前は避難小屋に荷物を置いて、強風に負けじと駆け登った。あのときは一瞬のように感じたが、やはり見えているのと見えていないのでは与える印象が大きく違うと感じた。
一歩また一歩と、秋田駒ヶ岳がどんな雰囲気の山で姿であるかを確かめるように、標高を上げた。
そして、出発から約5時間。少し疲れた表情で、二度目だが初登頂ともいえる秋田駒ヶ岳最高峰男女岳に立った。

山頂からは遠く眼下に田沢湖、そして、東北北部難関の和賀岳(わがだけ)も見えた。さらに振り返るとここまで登りつないできた山並みがずらりと見渡せた。
蒸し暑さには少し参ったが、連日の好天にただただ感謝した。阿弥陀池に再び戻り、阿弥陀池越しに山頂を眺めて、遅い昼食を取った。
木道を行き交う登山者が、少しずつ下山へと足を向けていく。岩稜の男岳へと登り、今にも動き出しそうな溶岩流が真新しい女岳を横目に、水沢温泉のペンションへと駆け下りた。

宿のご夫婦に大歓迎していただき、そのエネルギーに元気を分けていただいた。
ホッと田沢湖へと沈む夕日を目に一つの大きな山を越えた安堵と達成感が満ちていた。
そして、夕食後は気絶したかのように爆睡した。

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 この日記に書かれている場所はこの辺りです