日記

安達太良山を越えて
2020.01.17

昨晩は、2日前から動かぬ晴れの予報に安心して眠りについた。
夜が明け、部屋から外を見て「えっ!?あれ?」と声が出てしまった。なぜなら、空を分厚い雲がおおっていたからだ。
おかしい。一瞬、安達太良山に登ることをためらった。最新の天気予報を見ると昨日と変わらず、朝から晴天となっている。きっと、西吾妻山の時のように、予報よりも2~3時間回復が遅れているのに違いないと、予想して出発の準備を進めた。
正直には、3日間も麓からは同じ空を見続けながら停滞をしていたため、さすがに晴れてくれることを期待せずにはいられなかった。

8時に出発、4日前よりもほんの少しだけ積雪が増えたスキー場を登った。下見したときの踏み跡は、積雪によりほとんど消えていたが、雪が軽かったため、ストレスにはならなかった。

4日前よりも灌木に積もる雪が増えて、トンネルはさらに小さくなっていた。なりふり構わず、無数のトンネルを這いつくばって、雪まみれになりながら、進み続けた。結局、出発から3時間で、下見登山をしたときの折り返しとした障子ヶ岩(しょうじがいわ)に到着。
ホワイトアウトは変わらず続いたが、障子ヶ岩から船明神山(ふなみょうじんやま)へと立ち止まらずに進む。ホワイトアウトの中から現れた、大きな岩壁を回り込むように登り、安達太良山最高峰の乳首まで、コースタイム1時間ほどのところまで来ると、風が一気に強くなった。そして、ようやく視界を遮り続けた雲が風下に吹き飛んでいった。

それまで、全く見えなかった安達太良連峰の主稜線が直ぐ目の前に左右へと広がると同時に、気持ちが一気に高揚した。
自信はなかったが、「きっと晴れる」と信じ続けた甲斐があった。

安達太良山に登ったのは、もう6年前のこと。真夏の猛暑の中を磐梯山(ばんだいさん)へ登り、道路を走り、勢いで安達太良山にも登ったため、暑さと疲労で、あまり山の記憶はなかった。ただ、荒涼とした台地という印象だけがあった。
もちろん真冬のため、その時みた景色はないが、大きな爆裂火口は真っ白になっても、その形は良く分かった。
初めての冬の安達太良山をじっくりと踏みしめながら山頂へと近づく。風は強いまま。稜線の大小の岩に張りつく霧氷は、芸術的な形をしていた。絶え間なく強い風が吹き続けている証拠だ。

安達太良山の山頂には、その名も「乳首」という大きな岩があり、その上には石造りの祠がある。乳首を回り込むと、岳温泉側からの登山者が多数、平日にも関わらず登って来ていた。下山は踏み跡がしっかりありそうだ。
乳首へと登り、249座目となる安達太良山へと無事に登頂させてもらうことができた。障子ヶ岩を越えたときに、今日はもしかしたら晴れないかもしれないと覚悟をしたが、こちらの思いに応えてくれた山の神様に手を合わせて、深く感謝を伝えた。
山頂からの景色をいつまでも眺めていたかったが、思った以上に障子ヶ岩から山頂までに時間がかかってしまったため、岩影で軽く昼食を済ませて、全く雪の姿がない裾野を見下ろしながら、雪が無い場所へと向かうことへの寂しさを感じていた。

スキー場上部の薬師岳から安達太良山を見上げると、山頂の岩が乳首といわれる理由がわかった気がした。見たまんまに山は乳房のように膨らみ、岩は乳首のように見えた。
嘘のような本当の名前。実に不思議だが、ユーモアも感じた。
時代が変わっても、昔名付けたであろう人たちにも、乳首に見えたのだろうと勝手に解釈し、岳温泉スキー場へと下山した。
そして、厳冬期の難しさを経験しながらも、少しずつ前進してきた。
次はこの山域最後の一切経山となる。

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