日記

心身の解離
2019.12.19

朝4時半、暗闇に目覚ましが鳴り響く。すっと布団から出て、トイレと洗顔、歯磨きを済ませて、水を一飲みした。ゆっくりとお腹の準備を整えて、インスタント食品を食べた。朝からカロリーは高めに、1500キロカロリーほど。食後はお茶を飲みながら、着替えをして、荷物をまとめて便意を待った。
準備は整ったが、なぜだか気持ちが乗ってこない。
おかしい…。
いつもあるはずのやる気が出てこないのだ。朝が早いからだろう…夜が明けて、体が温まれば自然と心身の状態もいいバランスとなると思っていた。

週に1日、2日しかない晴れ間を逃すわけにはいかない、薄暗い中を歩き出した。今日を逃したら次の晴れ間は3日後となってしまう。4年前は真夏の猛暑の中を汗だくだくで登った会津朝日岳。今回は真冬日となったが、暖冬の影響により、麓は全く雪がない。
浅草岳山頂から遠くに見た会津朝日岳山頂部もそれほど雪が多くは見えなかった。

登山口を8時前に出発。誰も登った人はいないだろうと思っていたが、数日前に登ったであろう2人分の足跡があった。これは助かると踏み跡を辿って登り始めた。4年前にたくさん飲んだ最後の水場までは足首ほどの積雪だったが、そこからは叶の高手(かのうのたかて)への急な登坂となるため、途中からスノーシューを履いて登ることになった。

登山口出発から1時間が経過したが、未だに気持ちが入ってこない。登山に集中出来ていないわけではないが、心にゆとりがなく、ちょっとしたことでイライラしてしまっていた。
標高1000メートルを超えたところで、そんな状況にしびれを切らしてしまい、足を止めて山に向かって「わぁーーー!」と叫んだ。会津朝日岳にこんな心身が解離している状況で登ってしまっていることに申し訳ない気持ちが溢れた。
でも仕方がない。久しぶりに旅を前へ進めるため、貴重な晴れ間を逃さないために、「登頂」という結果を優先することにするしかなかった。

登山口から約800メートルを一気に登るとようやく、傾斜が緩くなり、空を覆っていた雲も少しずつ晴れてきた。
雪が少な過ぎたことと、前日の暖かい雨により、標高の高いところも雪が弛んでいたため、足元のコンディションはそれほど良くはなかった。それでも、苛立つ心を置いてきぼりにするように、がむしゃらに登り、汗をひたすらかき続けた。しかし、思ったほどコースタイムを短縮することができなかった。

40分ほどのアドバンテージで、山頂直下の避難小屋へと縦走し、最後の登りへと差し掛かると、雪のコンディションは良くなり、積雪量も増えてくる。それほど足を取られずに途中何度か足を止めながら、出発から3時間で山頂へとたどり着いた。
ちょうど登頂のタイミングに合わせるように、山頂から西側の雲が晴れて、尾瀬や越後の山々を一望することができた。
手作業で風避けの壁を作って、冷たい風を遮るように温かいコーヒーで心を落ち着かせた。誰もいない、そっと静かな山頂にて、なぜ「やる気」が湧いてこなかったのかを考えていた。

原因は明確で、「スケジュール通りに山を登れていなかった」からだ。
天候が不安定で難しい気象条件に、一座一座、悩まされながらも登れるタイミングや可能性を探り、初めての山初めての季節に拭えぬ不安を常に抱えながらの登山。例年になく雪が少ないことで、ここまで少ないタイミングに合わせて、登ることができてきたが、これが例年通りなら、もっと時間も労力もかかっていたと容易に想像ができていた。
この難しく厳しく容赦のない冬の山へと挑むことにこそ、価値があるとここまできたが、夏場の登山とは違うモチベーションの維持の難しさを、この冬初めて感じていた。それが積もり積もって、会津朝日岳に登るタイミングに実感となったのだろう。
「仕方がない」というあきらめにも似た割り切りも、心身のバランスを維持するためには必要なのかもしれない。
次の御神楽岳(みかぐらだけ)へと向かうため、再び只見町中心部へと下山した。

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