日記

コースタイム24時間
2019.10.24

夜中3時過ぎ、携帯電話の目覚ましが鳴る。いつもなら直ぐに消して、二度寝してしまうのだが、寝足りない体を起こして、直ぐに顔を洗う。こんな時間に目覚めるのは南アルプス以来だ。
慣れない時間の起床だったが、思いの外すっきりしていた。

目覚めて直ぐに歯と舌を磨き、水をゆっくり飲んだ。いつも通りの順序で、胃を起こして、朝ご飯を食べる準備をする。
さすがに早いので、固形物は少な目に、ゼリー状のものを流し込んだ。
いつもなら食後にコーヒーを飲んでゆっくりするところだが、サッと荷をまとめて、体を動かして、便をもよおすのを待った。

出すものを出して、4時過ぎ、ヘッドライトを灯して、中ノ岳登山口の十字峡へと走った。昨日までの疲れは感じていたが、そんなことを気にしている猶予はない。前回までの旅でも経験したことのないコースタイムにこれから挑むからだ。
コースタイムは24時間以上。これを1日で歩き切らなくてはいけない理由があった。それは、一つに台風の接近による明日以降の天候悪化、もう一つは、荒沢岳から銀山平への登山道に設置されている鎖や梯子が26日早朝に取り外されてしまうためだ。
本来なら1泊2日の予定を変更し、強行ではあるが、登れなくなってしまう前に中ノ岳と荒沢岳を登り、銀山平へと下山する選択肢しかなかったのだ。

ただし、このルートは初めて縦走するわけではないことや、これまでこの越後の山を何度も登った経験から、コースタイムは縮めやすいことが分かっていた。そのため、日の短い季節ではあるが、コースタイムの半分で縦走できる自信があった。
さらに、これだけの行程を縦走できる体力があるかを、3日前の鳥甲山(とりかぶとやま)~苗場山(なえばさん)の縦走で確認できたことで、よりイメージは鮮明だった。

約11キロを走り続け、予定通り6時に十字峡登山口に到着。薄暗い空を見上げると、予報よりも雲が多い。雨が降るような雲行きではないが、昨日よりも山の上は気温が低そうだった。
十字峡登山口からまずは中ノ岳へと標高差約1600メートルを一気に登る。初めて登る登山者にとっては、スタートから二合目のまでの這うような急坂に根を上げてしまう。
五合目を過ぎるとどっしりとした中ノ岳が見え、七合目に向けて、アップダウンを繰り返しながら、標高を徐々に上げていく。小さな池塘を囲むように、灌木の紅葉が見事だった。
八合目から主稜線との合流点まではこのルート一番の急坂。何度も登った経験から、この急坂に備えペース配分は出来ていた。稜線は想像通りに冷たい風が抜けていた。
九合目にバックパックを置いて、山頂へと駆け登る。そして、懐かしい山頂へと立った。
雲はまだ荒沢岳を隠してはおらず、兎岳(うさぎだけ)より続く稜線が長く延びていた。

ゆっくりしている時間はなく、直ぐに九合目へと戻った。兎岳までの縦走路からは、万年雪の残る深い谷が見え、谷も紅葉で紅く染まっていた。
想定した時間よりも1時間早く兎岳に到着し、少しだけどアドバンテージを得ることができた。中ノ岳までの登りを頑張ったためだ。

可愛い名前の兎岳から「荒沢兎縦走路」に入って、しばらくは雲に包まれた。灰ノ又山(はいのまたやま)を越えて雲が晴れ、太陽が差し込むと、眼下の谷から燃えるような赤一色の荒沢岳が見えた。
思わず初めて見る景色に「うわースゴい景色だ」と声がこぼれ、しばらくはその景色に見とれてしまった。
だが、その時間もそう長くは続かず、また雲に包まれて、4年ぶりの荒沢岳へと登った。

山頂から振り返ると、兎岳からの快適すぎる縦走路は雲に包まれてしまっていたが、4年前よりもキレイで、さらに歩きやすく、丁寧に整備してくれている管理者のみなさんに感謝の思いが込み上げていた。

山頂で1時間ほど晴れてくれるのを粘ったが、下山の開始のリミットとなり、銀山平へと下山した。
下山のルートもちょうど見頃の紅葉で包まれ、眼下の奥只見湖(おくただみこ)に浮かぶ遊覧船も見えていた。

問題の前グラからの鎖場は、4年ぶりだったが、あらためて鎖、梯子が取り外されてしまうと、下山は間違いなく不可能に近くなることを鎖を握りしめながら感じていた。
難所を抜けると、少しずつ薄暗くなり始め、16時過ぎに無事下山を終えた。
今回もお世話になる銀山平温泉の樹湖里さんへと到着する頃にはすっかり暗くなっていた。
大丈夫だと分かっているものの、心配もしていたというご主人と女将さんの安堵の表情が嬉しかった。

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