日記

静かな3座縦走へ
2019.09.02

朝食を食べていると、甲武信(こぶし)小屋を照らすように、東の空から太陽が登った。
支度を整えて、早速甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)へと登頂。朝一の山頂からは、これから歩く奥秩父の縦走路や富士山が見えた。甲武信ヶ岳から次の国師ヶ岳(こくしがたけ)までは、ほとんどがシラビソやツガの樹林帯を歩く。途中で一度縦走路を外れ、日本一長い信濃川の源流に立ち寄った。

ダケカンバの根元から、途切れることなく湧き出る流れが、日本一の川の始まり。今流れ出る最初の流れがたくさんの恵みをもたらしながら、日本海へとたどり着くと思うと、自然の力はすごい。最初の流れから水を分けてもらい、1日の飲み水とした。

再び縦走路へと戻り、国師ヶ岳までは誰とも会わない静かな時が続いた。
昼前に国師ヶ岳に登頂。山頂は雲に包まれてしまったが、風があり、時々周りの山が顔を出した。

奥秩父最高峰、北奥千丈岳にも寄り道し、大弛峠へと下りると、たくさんの車とバイクの数に驚いた。平日とはいえ、天気が良ければ、山梨県側からは車で容易に峠まで登って来ることができる。
ほとんどが金峰山への登山者ばかりで、国師ヶ岳までの登山道とはうってかわって、にぎやかな道のりとなった。

午後になり雲が多くなってきたため、少しペースを上げて金峰山へと向かっていると、トラブル発生!中間点となる朝日岳で小雨が降ってきたため、ザックカバーをしようと、ザックを下ろしたところ、ザックの後ろにくくりつけていた。薄手の防寒ジャケットが無くなっていた。
しっかりと固定せずに、走り出したことで、どこかに落としてきてしまったようだ。化繊の中綿が入った軽量の防寒ジャケットは、特に秋へと入るこの季節には欠かせない装備の一つ。これまで長きに渡って一緒に旅をしてきた装備のため、思い入れもある。蛍光色の黄緑色のジャケットのため、登山道に落ちていれば直ぐに分かるはずだ。
他の登山者に拾われている可能性があったが、拾われても登山道の脇の木に掛けてくれたり、登山口に置いておいてくれたりする。持ち帰る人はいないだろうと信じて走り出した。
朝日岳から20分もかからずに大弛峠まで戻ったが、結局見つからなかった。すれ違った登山者や駐車場にいた登山者にも聞いて回ったが、皆見ていないとのこと。山小屋に預けられているかもと見に行ったが、この日は休みで営業していなかった。急いできたから見落としている可能性があるかもしれないと、朝日岳へと戻るときは慎重に登山道を見ながら歩いた。
しかし、残念ながら見つからなかった。

肩を落として金峰山へと、最後の坂を登りながら、アドベンチャーレーサーになってから、常日頃からキャプテンに「ザックの外にモノをぶら下げたり、固定したりするときは、物理的に確実に外れないようにしなさい」と教えられてきた。その事が何度も頭をよぎり、くくりつけていた時に「落としそうだなぁ~」と一瞬思ったことを思い出しながら、自分の落ち度を悔いて、無くなったことは自分の責だと、追い詰めた。

「まぁ仕方がない、拾った人が大切に使ってくれているだろう」と心の整理がつくと、金峰山を包んでいた雲が晴れて、5年前に全く見えなかった五丈岩や周りの山を見渡すことができた。雲の切れ間から差し込む日差しが気持ちよかった。
トラブルがあったために、5年前もお世話になった金峰山小屋に、予定よりも1時間以上遅くなっての到着となった。
5年前とは内装もトイレもかなり変わり、より一層居心地のよい山小屋となっていた。
5年前の思い出を振り返りながら、美味しい夕食に1日を笑顔で終えることができた。

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