日記

深く奥へと深南部
2019.07.25

何度この言葉を使ったことだろう…「ようやく」。
深南部縦走2日目は、午前3時半、真っ暗闇の星空の下を出発。午後3時頃から雨予報のため、それまでに寸叉峡に無事下山する必要がある。
ヘッドライトを灯しての登山はかなり久しぶりで、星を見ることさえも久しぶりだ。
昨日歩いた三ツ合山(みつあわせやま)までの道のりをせっせと歩く。三ツ合山につく頃にはヘッドライトが必要ないほどの明るさとなった。
千石平(せんごくだいら)へと向かう途中で太陽が顔を出して、朝霧を照らして一時だけ神秘的な世界が広がった。

アップダウンを繰り返しながらも、徐々に標高は上がっていく。房小山(ふさこやま)から先の登山道は地図にはない。しかし、獣道はたくさんあり、主に鹿の生活道のようだ。笹原になると寝ていた鹿が歩く音に気付いて飛び起きていた。

天気は予報通りに進み、初日は久しぶりの登山に体がかなり疲労していたが、2日目は徐々にリズムが戻って、いいペースを保つことができた。
木々の間隔が素晴らしく、足元には笹原が広がり、うっとりするような森が続いていく。朝露で濡れた笹により下半身はずぶ濡れだが、そんなことはどうでもよくなるくらいだ。

黒法師岳(くろぼうしがたけ)が少しずつ近づくにつれて、深南部とは「人の手が届かない、深く奥へと入り込んでいく」世界だと感じていた。
バラ谷の頭まで来ると、夏空が広がり、三角椎の黒法師岳が飛び込んできた。ここからの眺めはこの日の一番だった。
急な笹の斜面を何度か足を滑らせながら下り、どうみても凄く急な黒法師岳へと登り返した。最後は獣道を頼り、笹藪を回避して、この日の最高峰179座目「黒法師岳」に10時に登頂した。
山頂には珍しい一等三角点があると聞いていたので、それを見つけて、タッチをした。

山頂でのんびりとしたいところだったが、寸叉峡まではコースタイムで7時間以上、11時前には山頂を出発して、縦走を続けた。
前黒法師岳からは1400メートルほどを一気に下る。あまりの急斜面でさすがに前太ももが悲鳴を上げた。午後3時、深く奥へと入り込んだ深南部より、人里へと無事に下山した。

野性動物にしか出会わなかった今回の縦走で、これまでの他の山々を思い出したり、重なる場面があった。いわゆる南アルプスらしさはなく、しかし、南アルプスでもある深南部を歩いたことで新たな一面に出会うことができた。

寸叉峡の宿で汗を流し、久しぶりの縦走になってしまったことでの不安が常にあったが、無事に下山することができて、旅がまた少しずつ進んでいることを噛み締めた。

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