日記

濃霧だからこその感動
2019.06.09

今日は天気予報では曇りのち雨とある。
北沢峠から仙丈ヶ岳へと登り、地蔵尾根から南アルプスを下山する予定だったが、梅雨入りしたために予定を変更した。天候が不安定なため、北沢峠から仙丈ヶ岳へと登り、再び北沢峠へ戻るルートにした。これは、天候が急変した時に、登頂を諦めて引き返す判断をしやすくするためだ。
梅雨とはいえ、きっと天候が回復する時間もある。焦らずに登りたい気持ちがルートを変更させるきっかけにもなっていた。

4時過ぎに朝食をいただき、5時半に北沢峠から出発した。
いい間隔で一合目、二合目、三合目…と続いていく。六合目手前から、登山道に残雪が現れる。その先も、登山道には仙丈小屋との分岐手前まで、所々残雪があった。急斜面に意外と残っているため、下山時の滑落には十分注意する必要がありそうだ。小仙丈ヶ岳手前までは急登が続く、そこから先は比較的緩やかに登る。

樹林帯は霧が立ち込めて、苔たちは雨により潤い、とても生き生きとしていた。吸い込む空気もしっとりしていて、鼻を通り抜ける感覚が分かる。この時期の登山は晴れる日が少ない、しかし、自分たち人間も含め、梅雨は必要な季節、この時しか味わえない出会いや発見がきっとあるはずだ。

小仙丈ヶ岳から先はハイマツが茂り、霧の中から雷鳥が鳴く声が聞こえた。少し進むと早速、この日1羽目の雄の雷鳥が姿を現した。瞳の上が赤くなっていて、キリッとした目に見えて力強い。その後も雌や雄の雷鳥に多数出会った。中にはカップルになっている雷鳥もいた。これから、新しい命を産むための準備をするのだろう。

仙丈ヶ岳までは濃霧ではあったが、雨は降ることなく。出発から2時間半ほどで170座目となる仙丈ヶ岳に登頂させていただいた。山頂で1時間、雲が流れて、目の前にたくさんの山が姿を現すことを予感して、コーヒーを飲みながら待った。風が抜けて、雲が薄くなり、太陽がうっすら見えるだけで暖かさを感じ、「たいよー!(ハンバーグ!風)※」と叫んで、心が動いた。

山頂も低い雲に包まれていたが、風もなく、比較的落ち着いたコンディションのために、ゆっくり山頂で待つ時間を持てた。また、北沢峠へと戻るルートに変更したこともゆとりが持てる要因となっていた。
濃霧ではあったが、梅雨としてはいいコンディションだったと思う。むしろ、濃霧だからこそ、歩いてきた道のりがちょっと見えるだけで、心が動く。今日は何度もそんな瞬間が訪れた。

「写真で見たあの景色を」「山頂からのあの展望を」期待するのであれば、梅雨時期に登らなければいい。この時期に登ることで、いつもは気にも止めないことや些細な変化が嬉しかったり、心が動いたりするものだ。

下山は足を止める時間が多く、登りよりも下山の方が時間がかかった。雷鳥との遭遇も今日は多かったのも、梅雨ならではだろう。
もしも、再び南アルプス北岳まで戻ってきた時に、仙丈ヶ岳が見え、もう一度登りたいと気持ちが前に動いた時は、登りに来たらいい。午後1時、生き生きとした森に見守られて、北沢峠へと到着した。

(※ お笑いコンビ「スピードワゴン」の井戸田さんのギャグ「ハンバーグ師匠」のセリフ)

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