日記

ツクモグサが八ヶ岳の夏を知らせる
2019.06.02

黒百合ヒュッテに2泊している間に、ご主人から何度もおすすめされた「ツクモグサ」。日本では、八ヶ岳の横岳と北アルプスの白馬岳にしか咲かない貴重な高山植物らしく、氷河期の生き残りで、寒さに耐えるために、細かな毛が生えている特徴があるという。縦走4日目は「ツクモグサ」に注目しながら、八ヶ岳最高峰の赤岳へと縦走する。
黒百合ヒュッテから天狗岳へと登り、夏沢峠を経由して、硫黄岳へと登る。八ヶ岳は夏沢峠を境に、北部を北八ヶ岳、南部を南八ヶ岳と言われている。

硫黄岳へと登り始めると、辺りは樹林帯がなくなり、岩がむき出しの岩稜が赤岳へと続く。硫黄岳山頂はたくさんの登山者で賑わい、下山する人、天狗岳方面へ縦走する人、赤岳へと向かう人のジャンクションとなっていた。横岳へと向かう最中、赤岳方面から縦走してくる人の多くが、ヘルメットを装着している。八ヶ岳も一部ヘルメット着用が推奨されているためだろう。それでもまだまだ着用率は低い印象を受ける。

硫黄岳山荘でツクモグサの情報を入手して、赤岳までの縦走で一番険しい横岳へと向かった。赤岳が近づくにつれて、山頂がしっかりと見えてくる。登山者の中には、八ヶ岳の夏を知らせるツクモグサを目当てに登って来ている人も多かった。カメラを構えて人が集まっているところにはツクモグサがあった。
ツクモグサを実際に見るのは初めて、薄い黄色のリンドウのような形に見えるが、花びらや茎にはびっしりと毛が生えていた。
また、太陽の光を受けて、花が開いたり閉じたりするらしく、登山者の中には、花開くツクモグサを探す人もいた。

赤岳展望荘のご主人と再会したときは、八ヶ岳は6月から月毎に貴重な高山植物が咲くようで、ツクモグサのあとは、ウルプソウ、コマクサと続くそうだ。
八ヶ岳の雪が溶けて咲く花がツクモグサであり、ようやく長い冬から夏へと切り替わる代表的な植物らしい。八ヶ岳は昔から麓の人たちから親しまれ愛されてきた山のため、年間を通じて季節を問わず八ヶ岳を味わってほしい想いもあり、通年営業の山小屋が多いらしい。他の信仰の対象とされてきた山とは違う親しみやすさが、八ヶ岳の魅力の一つなのかもしれない。

赤岳までの最後の登りを登りきると、ズラリと狭い山頂に黒山の人だかりができていた。ツクモグサや道中の人たちとの出会いで到着がギリギリとなったが、12時から始まる、八ヶ岳最高峰赤岳にて毎年開催される開山祭に、参加させていただくことができた。

約1時間ほどの神事と式典のあとには、参列者の方々に記念のバッジと護符が配られた。
バッジには65周年とあり、長きに渡り、受け継がれてきたことがわかる。
そして、宿泊は頂上山荘で。午後2時を過ぎると、山頂にいた400人ほどの参列者や登山者の姿はパタリといなくなり、静けさだけが残っていた。
焼ける空が今年の開山祭も無事に終わったことと、今年も夏山シーズンの到来を告げていた。

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