日記

野伏ヶ岳(のぶせがたけ)
2019.03.20

例年ならば、麓の集落にも雪は1メートル以上残っているはずなのだが、今年は地元の方々も経験がないほどに少ないという。というよりも雪がない。当然のように山も例外ではない。
今回は、この旅では初めて山スキーを採用する。乗るのが久しぶりだということもあり、事前に練習をしたかったが、麓に雪がないためにできそうになかった。さらに、翌日が登るにはもってこいのコンディションだったこともあり、ぶっつけ本番になるが、先の猿ヶ馬場山(さるがばばやま)と笈ヶ岳(おいずるがだけ)のことを考えると、ここでスキーを試しておきたい気持ちが強かった。

ずっしりとしたバックパックを背負い、スキーを担いで登山口まで歩く。予報通りの晴天と朝日が真っ白な野伏ヶ岳を輝かせていた。中居神社にて挨拶をしてから林道へ、早速スキーを履いたが、前半は脱着を繰り返した。標高が上がるにつれて、雪は増え、旧牧場跡地に出ると、見事な雪原と、去年とは全く表情の違う野伏ヶ岳が目の前にそびえていた。

コンディションが良かったためか、平日でも登山者は多く、皆それぞれに選んだ方法で登っていた。スノーシューやワカン、スキー、なかには長靴という人も。長靴のおじさんはすごく早かった。あっという間に追い抜かし、あっという間に下山していった。
明らかにいつもよりは時間がかかっていた。しかし、緊張や不安もあったが、何よりも骨折で登ることができなかった山へ、年を跨いで、季節を越えて、きちんと戻ってくることができて、登ることができていることが嬉しかった。

季節外れの暖かさは、登っているときは、暖かさを通り越して、暑くなっていた。汗だくになりながら、息をあらげていても、楽しく新鮮だった。林道の入り口から3時間半、ようやく登頂した。夏場は深い笹藪に覆われているはずの山頂は、真っ白いステージだった。標識もなく、見渡せば半年前に登った山々が別人のような姿で迎えてくれた。白山はやっぱり真っ白だ。山頂で2時間のんびり過ごした。6ヶ月半待ちに待った山をそう簡単には下りたくはない。

そして、最大の緊張の時間がやって来た。それは山頂からの滑降だ。
もちろん初めての経験。あまりの暖かさに雪崩のリスクも高い。慎重に滑り出すが、荷物が重いために、ターンもままならない。
本来なら、あっという間に下ってしまうはずが、慎重になりすぎたためか、下山に2時間もかかってしまった。山スキーデビューは楽しくも暑く、汗にまみれ、ほろ苦いものとなった。だが、一度も転倒することなく、ケガなく帰ってくることができ、最後は心地よい充実感に溢れていた。

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