日記

武甲山から奥多摩へ
2019.02.15

変わり続けている武甲山(ぶこうさん)へ。
夜通し稼働を続けているのか…早朝からゴォーンゴォーンと音を立てて動く、採石工場を抜けて、表参道入り口へ向かう。
見上げる武甲山は今にも倒れてきそうな壁のように見え、工場の音が武甲山の悲鳴のようにも聞こえた。

登山口となる一の鳥居は、町からは武甲山のちょうど真裏になる。不思議なことに、さっきまでの騒々しさは無くなり、鳥の囀りが聞こえてくるほど静かになった。騒音を遮っているのが武甲山自身と思うと、素直に喜べない感じがあった。

表参道からの武甲山は、杉林の中を抜けていく。山頂の神社までは52丁、約109メートルおきに丁石が並び、長い歴史を感じる。途中には少なくとも樹齢500年以上はあるだろう大杉があり、長い間たくさんの参拝者を見守ってきたことだろうと思う。
山頂手前には一部、石灰岩の岩頭が露になっていて、やっぱり石灰岩の山だと感じることができた。きっと60年前はもっとたくさんの大小様々な石灰岩の間を抜けてたくさんの人が登ったのだろうと想像した。

山頂の神社にて参拝をしたのちに、現在の山頂へ立った。4年前はフェンスの先に見える景色を見て、「眺めがいいなぁ~秩父の町が一望できる」と見た景色そのままに感じたが、今回は掘削される前の武甲山を知ったことで、現在の山頂からさらに30メートル以上も上に本来の山頂があったことを、今は無い空に思い描いていた。
日本三百名山の中ではもしかしたら、唯一かもしれない、人為的に標高が変わってしまった山は。
しかし、武甲山が削られ変貌していくことに直線関わっていないとしても、同じ人間として、決して他人事ではなく、同等の責任を背負っていると思わなくてはならないだろう。
何故なら、自分達の生活に必ず武甲山から採掘された石灰岩が様々なモノに姿を変えて、役立てられ助けてくれているからだ。

武甲山からは奥多摩御嶽までの激しいアップダウンの連続となる縦走路を走り抜き、何とか日没前にたどり着いた。久しぶりに膝が笑った。

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