日記

ぐるりと北アルプス
2018.10.15

猛烈な風と雹(ひょう)が打ち付けるなか、薬師岳に登頂したのが4年前。山頂にはものの数分もいなかった。目を開けられないほどの雹が顔を叩いた。
予報は、曇りから晴れとある。今回はそうはならなそうだ。

赤牛岳から見えた見事に整った「天然記念物の圏谷群(カール)」を上から覗き込むのを楽しみに太郎平小屋から登り始める。
太郎平から、山頂がすでに見えているため、近くに感じるが、往復5時間半のコースタイムで8キロある。自分が歩いていく道のりが、出発点から見えるのは好きだ。山頂に立てば、自分が歩いてきた道のりが見えるからだ。

西風に冷気が乗ってくる。標高が上がるにつれて、今日も鼻水が止まらない。
途中の山荘裏から、楽しみにしていた圏谷群が始まった。上から実際に見下ろして、その大きさに驚く。きれいなカールだ。これを3つも薬師岳が抱えているのだから、山が大きいわけだ。赤牛岳から見たときも、薬師岳のどっしり感は北アルプスのどの山よりもあるのではないかと感じた。

白や灰色の山肌を踏みしめながら、標高をぐんぐん上げていくと、山頂手前に石造りの祠があり、中には木像が安置されていた。向かいには、これまた石造りの小さな建物がある。4年前にここで激しくなった風雨から一時的に逃れたのを思い出した。
木像に手を合わせて、山頂へ向かうと、次第に西から風が強くなり、雲が湧き始め、山頂は包まれた。
「まさか…4年前と同じに!?」と思ったが、この日は太郎平小屋と薬師岳の往復だけだったので、時間にゆとりがあった。
「山頂で回復するまで待とう」と決めた。

風をしのげる東側の斜面に腰を下ろした。しかし、明らかに昨日よりも日中の気温が下がっていることが、全身に伝わってきた。直ぐにダウンを着込み、ポットのお湯を飲んだ。雪は降らなくても、冬が着実に直ぐそこまで来ていると感じた。
1時間たっても、2時間たっても、結局雲は晴れなかった。
さすがに、体も冷えきってしまったので、薬師岳との根比べは、今回も薬師岳に軍配が上がった。
「きっとこういう時は太郎平に戻った時に晴れてくるのだろう…」と思うと、やっぱりそうなった。

それでも、前回よりも多く発見があった。
薬師岳からわずかに見えた立山連峰や後立山連峰、そして鍬崎山(くわさきやま)が目の前に見え、3週間をかけて、北アルプスの北部、中部の山々をぐるりと一周してきたことを目の当たりにした1日でもあった。

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