日記

たいまつ行列
2018.06.02

倉敷市を出発する前に、大山での宿泊を予約すると、宿の女将さんから「もし一日早く到着出来たら、大山の開山祭と前夜祭のたいまつ行列に参加できますよ!」と教えていただいた。
大山の開山祭がこの週末にあることも、前夜祭のたいまつ行列のことも、全くのノーマークだったので、自分にとってはとても嬉しいタイミングに遭遇することになった。
慌てて、大山までのスケジュールを検討しなおし、宿泊地を変更した。
何とか一日40キロほど歩けば、一日短縮できることになり、見事にたいまつ行列に参加することが出来ることとなった。そのことを女将さんに伝えると、「今年は開山1300年の節目の年なので、すごく盛り上がっています。とてもいい経験になると思いますよ。」との言葉をいただいた。教えてくれた女将さんに感謝した。

当日、大山の西側より富士山を見上げているような美しい姿を眺めながら、延々と続く坂道を桝水高原(ますみずこうげん)まで登り続けた。
県内外の車が次々に僕を追い越していく。その数に驚いた。
途中、大山の絵を展示している小さな美術館「伯耆の国(ほうきのくに)山岳美術館」に立ち寄った。館長さんが気に入った絵を集め、展示しているのだが、大山は遠くから描いた絵は多い中で、大山山中で描かれたものは少ないという。館長さんは長年、たくさんの山の絵を見てきて、画家が描く環境が絵にもしっかりと出るという。
「山の中で描いた作品には、しっかりと山の空気感も描かれる」と館長さんの言葉が心に響いた。

前夜祭会場となる大山の参道入り口付近は、すごい人の数で溢れていた。
山から下りてくる人、前夜祭に参加する人、前夜祭を見に来る人、明日の開山祭に参加する人などなど。
宿にチェックインし、シャワーを浴びて、さっぱりしてからたいまつ行列で使うたいまつを受け取りに行き、メイン会場でご当地の食べ物を食べて腹ごしらえ、暗くなる前の18時30分に合わせて、スタート地点となる大神山神社奥宮への参道を上がった。たくさんの人がたいまつ片手に登っていく。鳥居から奥宮までの参道は自然石が敷き詰められた石畳で、長さは日本一だ。
最後の階段を上り、奥宮にて挨拶をした後は、奥宮をぐるりと取り囲むように参加者が並んだ。その数は2000人以上!県内外、国内外からの参加者がどきどきワクワクしながら、時を待った。

19時過ぎいよいよ奥宮正面のかがり火に火がともり、先頭よりゆっくりと自分の持つたいまつに火を灯し、階段を下りていく。僕がいたのは列の中間あたり、始まってから30分くらい経過して、ようやくかがり火まで進み、自分のたいまつに火を灯した。
たいまつを高く掲げ、階段を降り始めて、参道を見るとこれまでに一度も見たこともない幻想的な世界が広がっていた。ゆっくりゆっくり進んでいく。後ろから前から興奮気味に感動する参加者の声が聞こえる。
階段を降り切ると、滑りやすく細い石畳となる。なんか頭が暑いな~と思って振り返ると、背の低いおばちゃんが持つたいまつが丁度目の高さにあった。どうやら、高く掲げていたけどすでに疲れてしまったそうだ。
まあ僕の頭には燃えるものがないから大丈夫ですよ~というと笑ってくれた。

徐々に細く長くなるたいまつ行列は、スタートから30分~40分ほどで、メイン会場まで下りてくる。
今年で72回目となるたいまつ行列の始まりは、地元の山岳会の人たちが、ランタンなどを持って参道を降りてきたのが始まりだったそうだ。それが今では1年で一番大山がにぎわう大きなイベントとなった。
最終的には2300本のたいまつが火を灯し、参道を歩いたと聞いた。
今回の旅で大山の夏山のはじまりを告げる風物詩に参加できたことは、偶然のようで必然だったのではないか。旅を楽しむ僕への山からのプレゼントだったかもしれない。
一度は参加することをお勧めすします。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです