日記

阿蘇山
2018.03.02

ピリッと肌をさすほどに冷え込んだ朝を迎えた。昨日吹き続けた風は止み、空はすっきり晴れ渡っていた。1日待ってよかったと素直に思う自分がいた。
天気は回復したが、昨日と同じ場所からの入山は避けた。なぜなら火口の活動状況によっては、晴れていてもゲートが開かないことがあるからだ。
阿蘇山の南側には行儀松ルートと倶利伽羅ルートがあり、そちらから登れば、入山規制の火口から1キロの範囲外となり、山頂まで行くことができるからだ。地震による崩落が激しいと聞いていたが倶利伽羅ルートを選び、その崩落具合を肌で感じながら、砂千里を目指した。

美しいススキなどの牧草地が山の中腹まで広がるはずの景色のなかに、黒土が露になった斜面がいくつもの目に入ってくる。しましま模様のようだ。悲しさも感じたが、これが地震の力であり、これが今の阿蘇山だとしっかりと目に焼き付けた。

砂千里を目前にすると、人の声が聞こえた。どうやら、今日は規制が解除されて、ゲートが開いたようだとわかった。
今まで歩いてきた一面の草原とは一変して、真っ黒い大地と、火山特有の赤い岩肌が露出した岩山が現れた。この極端な変化も阿蘇山らしい。火口見学へと向かう車や歩く人影が見える。遠くで表情までは分からないが、きっとみんな笑顔だと思った。そして、自分が向かうべき方向へ視線を向けると中岳へ続く気持ちいい稜線を歩く登山者が見えた。登山道の足跡を見るとすでに20人ほどが登っている感じだ。
登山道の踏みあとが不明瞭なところがあることに気付き、入山規制解除までの2年の月日を感じる。

稜線まで登りきると、先程見上げていた砂千里や火口そして、遠く草千里や外輪山まで一望できて、4年ぶりの高岳が目の前に見えた。走らずにいられない緩やかな稜線が中岳、高岳へと続き、笑顔で走り出した。気持ちがいい♪
人生で3度目の阿蘇山はこれまでで一番遠くまで見渡すことができ、阿蘇山は広大なカルデラの中心にあるわけではなく、南よりに位置していることにも初めて気づくことができた。

阿蘇山最高峰の高岳からの景色もカルデラ、麓の町、九重山、阿蘇の山並みとすべてを見渡すことができてすばらしいが、僕が一番好きだな~と感じたのは、中岳へと続く稜線の途中から見た西の景色だった。
煙を吐く火口、真っ黒い砂千里、金色の草原草千里、烏帽子岳や杵島岳、カルデラの先には雲に浮く普賢岳が見える。振り返ると中岳高岳が見えてくる。阿蘇山の代表する景色がパノラマで広がっているのだ。
こんなに阿蘇山をじっくりと見ることができたのも、不思議な巡り合わせというか、すごい偶然がもたらした時間があったから。
昨日、駅舎で6時間ジラされた甲斐があった。

いつものことだが、下山はあっという間。初めての火口見学で煮えたぎる火口池を覗き、阿蘇山がもたらす恵みは目に見えるものだけではないことを感じ、南阿蘇村へと下った。

阿蘇山は今、再び火山活動が活発化し、入山規制となっている。規制解除後にたった1日だけゲートが開いたことになった。
それをニュースで知り、改めて生きる火山と付き合っていくのはとても難しいことだと感じた。

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 この日記に書かれている場所はこの辺りです