日記

北アルプスの一等地
2018.10.14

北アルプスの中心部に楽園のような場所がある。それは「雲の平」。北アルプスを訪れる登山者にとって、憧れとも言える場所だ。
僕も遠くから眺めたことはあるが、実際に歩いたことはない。

雲の平は黒部川の源流部がほぼ一周、縁取るように流れ、祖父岳とワリモ岳だけが辛うじて、繋がっている。上空から見れば、ひょうたんのような形に見えるかもしれない。
雲の平を取り囲むように、明峰がずらり、西に薬師岳、黒部五郎岳、東に鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳と続く。どの山へ行くにも、雲の平を経由することはない。なぜなら、北アルプスを構成する主稜線からは独立しているからだ。
もしも、水晶岳や黒部五郎岳に向かう途中に、雲の平があれば、ここまでたくさんの登山者にとって、憧れの場所にならなかったかもしれない。
あと1日あれば、雲の平をコースに入れられたと思い、下山についた人は多いのではないだろうか。

そして、今回は運よく薬師岳へ向かう途中に雲の平をルートに組み込むことができた。周りの山々から見るのと、実際に歩くのでは全然感じ方が違うはずだ。北アルプスの縦走で、とても楽しみにしていただけに、当日の天候が気がかりであった。

出発の朝の天気予報は曇り時々雨とあった。
実際に出発前は濃霧となり、槍ヶ岳や鷲羽岳も見えなかった。内心「雲の平の名のごとく、霧に包まれた台地が雲の平」になってしまうかもしれないと思っていた。
しかし、最初の日本庭園にたどり着くと、予報は見事に裏切られ、青空の下を無数の雲が流れ、雲の平を雲の影が通りすぎては、時おり日差しが差し込むのを繰り返した。スイス庭園、ギリシャ庭園、アルプス庭園と数キロに渡って繋がる木道をたどった。
微妙に変わる庭園の雰囲気と、そこからの景色は、腰を下ろさずにはいられない。まさに、「ここは北アルプスの一等地だ。」と思った。

そして、雲の平の真ん中に赤い屋根の山荘がポツリと建つ。周りの景色に絶妙に溶け込んでいる。なんともバランスがいい。
今度はもう少しゆっくり来よう。そう思い薬師沢へと下った。

太郎平に到着した時に、振り返ればさっきまでいた雲の平が見える。
やっぱりあそこの良さはその場所にいかなきゃわからないと改めて思った。

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