日記

厳しい1日
2015.06.17

まだ夜明け前、薄暗い空の中にカムイエクウチカウシ山が見えた。
シュラフにくるまりながら朝食の準備をした。
時間と共に空が明るくなり始め、すぐ隣にテントを張っていた撮影スタッフも「おお~スゴいね~いい景色だね~」と声を上げていた。

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朝日の中にこれから進むカムエクまでの稜線が徐々に見えてきた。
見通しの良いアルプスの稜線上では、登山道が遠くまで続くのが見えたりするが、ジャンクションピークから始まる登山道らしき踏み跡は、50メートルほど先で、濃いハイマツ帯に消えていた。

「行ってみなければわからない。」

予定では1日で再び今いる場所まで往復するが…時間が大幅に遅くなることも考えて、1日分の食料などをジャンクションピークにデポして準備を済ませ出発。
出発して、早速胸まである硬いハイマツ帯に突入した。

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アドベンチャーレースを彷彿とさせる1日になりそうな予感がした。
「このハイマツはいつ終わるのか? どこまで続くのか?」先がわからない感じが続いた。
朝露で濡れた笹藪では何度も足を滑らせ、気づけば全身ずぶ濡れとなった。
地形図を見ながら、遠く霞むカムエクを見ながらも目の前の一つ一つのピークに集中した。

一座また一座と、名もなき山頂を通過した。
目測と通過時間で大体の予測時間を算出して進む。
カムエクを11時過ぎに登頂して、12時までに出発出来れば、日没までに戻ってこれる、と予測を立てつつも、焦る気持ちを捨てて、絶対にケガをしないように一歩一歩に集中した。
いつものように歩けない。何度もハイマツに「そう簡単には通さないよ!」と言われているかのように跳ね返された。

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アドベンチャーレースでは当たり前の感じであり、肉体的には藪のない道を歩くよりも比べ物にならないくらい早く疲労するが…どんどん上がらなくなる足を上げ続けるために精神力でカバーした。

「大丈夫だ!!がんばれよーき!」

うまくいかずイライラしそうになる度に、そう呟いた。
平常心、平常心。

時々、景色に目を向けると、自分が本当に日高の懐を歩いていることを実感する。
幌尻岳が一際ドッシリとして美しかった。

中間地点を過ぎてから待ち構えていたのは、200メートルを超えるアップダウン、さらに大きく標高を上げ下げしながら、細かい岩稜のアップダウンが連続した。
この細かいアップダウンが想像以上に体力を奪った。そして、日が高くなるにつれて、東側と西側で風の温度が全然違うことに気づいた。東側からは蒸し暑い風が山をかけ上がってきていた。

それを感じていると、次第に辺りに風と共に雲ができてきた。
カムエク手前最後のピークに着いたとき、カムエクの山頂には雲がかかり始めていた。
あとひと登り!心配していたほど苦戦することなく、予定よりも30分遅れで三角形の形が印象的なカムイエクウチカウシ山に登頂した。

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予想外だったのは、ルート上に自生していた低木の黄色い花粉で、体に引っ掛かる度に花粉を撒き散らしていたため、山頂に着いたときは花粉症の症状で目も鼻もぐずぐずとなっていた。
症状が最悪の状態の時に登頂したので、山頂に到着した喜びに浸ることができなかった。

「あー目が~」と止まらない涙に言葉が漏れた。
花粉症の症状は携帯していた薬のおかげで回復したが、雲は晴れることはなかった。
リミットと決めていた12時にカムエクを出発。
復路へ進んだ。

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何とか日没までに戻りたい。雲の切れ間から先ほどまで歩いていた稜線が見える。
「さぁ、集中だ!!」明らかに疲労している体に指令を出して、進んだ。

二度ほど座り込んで食料を補給したが、それ以外は常に歩き続けた。
一座また一座と乗り越えて、どんどん遠くなるカムエクを時折振り返ってみた。次は八ノ沢から登ろう!と何度も思った。
夕日に染まるジャンクションピークが見えた時、この日一番の安堵感に包まれた。夕日を見ながら、すごい1日だったことを思い返した。

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そんな中で、ハイマツ帯との格闘の最中に足元に咲く高山植物の花たちが、ふと気持ちをリラックスさせてくれ、笑顔になれた。
ジャンクションピークに着き、テントを立て、夕食を食べたら、一気に眠気に襲われた。
今までで一番激しい1日になったことは間違えない。明日無事に下山できれば、二百名山の中でも難関な山を一座クリアすることが出来る。今は少しでも体力の回復に努めよう!

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 この日記に書かれている場所はこの辺りです