日記

優しい笹畑
2015.09.27

まだ暗闇の4時過ぎ、朝方の冷え込みで目が覚めた。しっかりと寝袋にくるまり、目覚ましをセットした4時半まで二度寝した。
いつもなら、三度寝してしまい出発が30分遅れてしまうのだが、今日は中央アルプスの難所を行くので、予定通りの6時に安平路避難小屋を出発した。

水場で水を3リットル補給した。安平路避難小屋から先、池山までは稜線から下りないと水場がないためだ。夏場なら倍の量が必要になるが、季節が秋のため半分で足りると想定した。
その後結局、水は南駒ヶ岳まで500ミリリットルで足りてしまい、駒峰ヒュッテにも宿泊をしなくてすんだので、駒ヶ根まで1リットルで足りた。

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さて、時間を巻き戻し、安平路山には6時半過ぎに到着した。山頂に立っても特別な印象は無かったが、それはこれから行くルートが安平路山の真の姿だと感じていたからだ。
奥念丈岳、南駒ヶ岳と続く尾根には、予想通り安平路山山頂を出るとすぐに登山道は無くなり、マーキングも乏しくなった。
さらに、木々の根元は笹がうっそうと繁っていた。
この笹畑が今日の前半のお相手となる。

地図には破線でルートが示されているものの、あまりそのルートを意識すると極端に進む速度が遅くなるので、南駒ヶ岳までほぼ一直線にのびる北東方向の尾根から外れないことだけを意識することが一番大切だ。それ後、南越百山からは笹畑が終わり、登山道ははっきりしてくるのだが、その間、いくつかのピークを越えていく。尾根は基本的に山頂など高い方向に集まっていくが、低い方向には、どんどん枝分かれしてしまう。なので、笹畑の中を進んでいて、踏みあとやマーキングを見失ったときは、進むべき方角を確かめて、高いほうにどんどん登れば、目的の山頂にたどり着くことができる。変に登りたくないからと、トラバースすれば、山頂から先に続く正しい尾根に乗れないことがある。

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実際に歩いて思ったが、地図に載っている山の名前の標識など、現在地が分かるものはすでに朽ちて分からなくなっているので、参考にならない。また、コースタイムも、なかなかいつものように歩けないので、時間からも読み取りにくい。視界が開けていれば、先を見通せるので、他の山との位置関係などでわかることがあるが、展望がなければなかなか難しい。
そういう時は高度計を補助として使うといい。標識がはっきりとわかるところでセットして、これから進む山頂やコルなどとの標高差を地図から読み取り、登りきった時や下りきった時に標高差を確認していけば、現在地を判断する目安になる。
しかし、これも天気などで誤差が出てくるので、あくまでも目安として考えたい。地形をしっかり見て、現地と地図の対比を忘れないことも大切となる。

このようなことを意識しながら、さくさく進んだ。
ここを通過するまでは、北海道の笹藪をイメージしていたが、実際はかなり素直な笹で、背丈も高いところでも僕の背と同じくらいだったので、先を見通せることができ助かった。

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イメージのハードルが高かったので、ゆとりもでき、気を付けなくてはいけないポイントをしっかりと押さえながら、いいペースで笹畑を泳ぐことができた。
足元が見えにくい笹畑では、平泳ぎをしながら進む。急斜面では、倒れた笹に乗るので、足がとられやすいことがある。そういう時は平泳ぎをしながら、前の笹を握り、あとは腕力で体を上へ上へと引き上げるとスムーズだった。

様々な笹畑の通過方法があると思うが、本当に一番大切なのは、笹とケンカしない!心にゆとりをもっていつもと違う登山を楽しむことだ!
安平路山から南越百山までのように、登山道がなくマーキングや標識もない、笹畑(笹藪)が続くような場所に行くときは、いつものように歩けなかったり、時間や体力を消耗してしまうことは当たり前だと思うことも大切だろう。
何よりも、自分がおかれた状況を楽しむことやイヤになってしまい気持ちが折れないようになるといい♪

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結果的には、安平路避難小屋から越百山までのコースタイム10時間を約6時間で抜けることができた。また、今日中に下山できる目安がついたことやアドベンチャーレースを彷彿とさせる時間を楽しむことできて、越百山に着いたときは、ホッとした。
越百山から先は、別世界が広がっていた。稜線から見下ろす山肌は黄色や赤に染まり、中央アルプスの秋の深まりを感じた。
前半の笹畑からのあまりの景色の変化に、驚きも大きくなったと思う。

また、歩きやすい登山道があることへの感謝もあった。登山道を維持するために本当にたくさんの人が携わっていることも歩きながら感じていたい。越百山から南駒ヶ岳まではあっという間に到着した。
雲の切れ間からは、空木岳が顔を出してくれた。
深田久弥さんが百名山を選ぶとき、南駒ヶ岳と空木岳で悩んだらしいが、南駒ヶ岳からの景色を見れば、悩みたくなる理由も何となくわかる気がした。

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実は今回で4回目の登頂になる空木岳、これまでの3回は雲に包まれたり、夜だったりと1度も山頂見たり、山頂からの景色を見たりすることが出来なかったが、今回はそれが叶った!
南駒ヶ岳から空木岳の道のりも気持ちの高揚とともにあっという間に到着した。
空木岳から見返した南駒ヶ岳も見事な景色だった。
そして、眼下のカールの紅葉も素晴らしかった。

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一人で山頂を満喫していると、そこにお父さんと小さな男の子が登ってきた。
「会えたぁ~」の言葉で、会いに登ってきたことがわかった。
小学3年生という男の子はランドセルのふたまわりは大きいであろうザックを背負っていて、ウエストベルトはユルユルだった。
ちょっと緊張気味の男の子はお父さんに促されるように、「ふぅ~」と一息着いてからザックから僕の本を取り出した。
子供にとっては重たい本を空木岳まで、背負って来てくれたことも嬉しかったが、いつもこの本しか読まないとの言葉にさらに嬉しくなった。

小学3年生の男の子は今日で百名山が33座目となるようで、その事にも驚かされた。
今夜は駒峰ヒュッテで一泊とのこと、小さい頃からいい山旅をしていることが少しだけ羨ましくなった。

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空木岳からは風のように駒ヶ根まで下りた。
途中、他にも山頂で待ってましたという子供を連れた家族などに会って、喜ぶ笑顔に僕も笑顔になった。
また、追い抜かす登山者の多くが若い女性のソロ登山者だったのが意外だった。何を求めて一人山へ行くのだろうか?

蓋をあけてみれば、コースタイム約21時間を10時間半で抜ける快走だった。
そして、今日の宿は1年ぶりの駒ヶ根ユースホステル、変わらぬ笑顔で今日も出迎えてくれたご主人が印象的だった。
今日も本当に内容の濃い1日となった。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです