日記

いい年になりそうだぁ~!
2016.01.01

「今日ゴールかぁ~」
昨日の65キロが最終日の体に相変わらずの疲労感を与えていた。
年越らしいことは、年越そばを食べたくらい。
いつもなら深夜0時まで起きている。
旅の途中で新年を迎えることになるとは、7か月前北海道をスタートした時は想像もしていなかった。しかし、予定以上の日数がかかってしまったとしても、無事にここまで歩み続けることができたことを素直に喜びたい。
外が明るくなるにつれて、じわじわと最終日の一歩目を踏み出す時間が迫っていることを感じた。
ゴールの日に限って、目はパンパンに腫れている。目をこすりながら冷たい水で顔を洗い、目を覚ます。

部屋に戻り、本当は前日に書き終えるはずだったゴールのために用意した年賀状に、出発時間を過ぎてもイラストを描き加えた。これを頭に張り付けるのも最後となる。
描きながらしみじみ、どんなことを描こうか真剣に考えた。最後の日だからと色も四色に増やした。
旅を出発してから、222日目。
年は2015年から2016年へと変わった朝は、特別な朝のようにも、いつもと変わらぬ朝にも思えた。

いつものように出発時間をとっくに過ぎた僕を宿の玄関先で待ち構えるNHK撮影班、彼らとの日々も今日で幕を下ろす。
結局、九分九厘朝の出発時間は遅刻を繰り返した。
「ひとり旅なのだから、われわれのことは気にしなくていい!」
と言っていた撮影スタッフも、毎日遅刻するものだから、僕の遅刻癖も日常になっていたのだろう。
いつもと変わらぬ、朝のテンションが低い顔で歩きだすが、そんな僕にまぶしい新年の日差しが容赦なく「テンションを上げろ~今日は記念すべき日なんだから~!」
といっているかのように、降り注いだ。

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最終日の天気がこれ以上ない快晴となったことに心の中で感謝し、太陽に今年もよろしくお願いしますと伝えた。
元日の朝を旅の途中で迎えることも、鹿児島で迎えることも初めての経験、僕は本当に幸せ者だと、一歩また一歩と今日も力強く歩けていることにうれしくなった。
「日本2百名山ひと筆書き~グレートトラバース2~」の最終目的地「本土最南端佐多岬」まで、残り約40キロとなる。
当初の予定総距離8,000キロはとうに超えているが、不思議とそんな途方もない距離を歩いてきたとは、自分自身全く実感がない。
去年もそんな感じはあったが、今回はさらにその感覚が強い。
歩くことが、山を登ることが、日常になると言うことの証拠だろう。

「佐多岬まで30キロ・20キロ…」と距離が縮んでいくにしたがって、日差しも高くなり気温も上昇した。冬!?というような陽気だ。
冬を感じていた山並の景色も、紅葉や葉を落とした木々は無くなり、南国らしい常緑の木に覆われた山が、歩く道の両サイドに広がった。

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佐多岬から初日の出を見たであろう県内や他県の車とすれ違う、それと僕を追い越しながら「よーきさ~ん!佐多岬でまってま~す!」と言いながらの車が増えていく。
先に佐多岬で僕の到着を待つ事務局のスタッフからの連絡でも、初日の出はかなりの混雑だったことや、昼頃から僕を待つ応援の方々が集まってきたことなどの連絡が入った。
正月早々に、南の果てまでゴールを迎えてくれる人が居ることに、自然と進む足も速くなった。
しかし、濃い疲労は走ろうとする僕の脚にセーブをかけた。それでも、午後3時のゴールを目標に、積極的に下りは走った。

午後に2時過ぎに、佐多岬まで5キロを切った。
「あと5キロ、されど5キロ!」最後の最後まで「もうゴールしたも同然だ!」と緩みそうになる気持ちに何度も「まだだ!まだだ!」と気を引き締めた。
山もいつも同じ気持ちだった。最後の最後でつまずいて怪我をすることがある。本当に下山を完了するまで気を抜かないことを肝に銘じてきた。
旅全体を通しても全く同じ気持ち、ここまでゴールを意識しないようにしてきたことはない。桜島に登頂して、残り100キロとなった時でさえ、「最後の最後まで何があるかわからない!」と、ゴールが近付くにつれて無意識にそのことを想像してしまう自分を抑えてきた。

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残り3キロ、佐多岬へ続く道の両サイドにはたくさんの車が路上駐車されていた。
すでに佐多岬までの遊歩道には100人を超える人たちが列を作っているそうだ。
ゴールを意識する気持ちを抑えきれなくなった時、さぁ~ゴールでどんな顔をすればいいんだ?どんな気持ちで?とここまで気持ちを抑え過ぎてイメージを作っていなかったので、わからなくなってしまった。
考えても浮かばないので…まぁ~考えても仕方ないからその時の気持ちで!と考えているうちに、駐車場に到着するとたくさんの人が「よーきさん!おめでとうございます!」と声が聞こえた。
それを聞いて、「あっ!本当に旅が終わるんだな~」と実感した。
自然と湧きだす喜びで、トンネルの中を歩きながら笑顔になった。
「もう、張りつめてきた気持ちを緩めてもいいでしょう!」と言いながら、トンネルを抜けた。
すれ違う人から「おめでとうございま~す!」と贈られる言葉。
途中の神社でいつものように今日の日にお礼をこの地の神様に伝え、「よし!行くかぁ!」と最後の数100メートルを歩いた。

佐多岬の展望台手前で、遊歩道にはたくさんの人たちがずらりと並び、みなさんの笑顔に僕も自然と笑顔で答えながら、一歩また一歩と進んだ。
そのあとを追うように、カメラマン、応援の方々が続いた。
「本土最南端佐多岬」の看板の奥には、大海原が広がった…ゆっくり展望台の奥まで進み、展望台の手すりに手をかけた。
歩みが完全に止まった。
旅が終わった。本当にここまで来ることができた。
これは夢ではない現実だ!俺は本当にやり切ったのか!?やり遂げたんだ!

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ここまで、本当に長かったよな~な~よーき!
よく歩いてきたな!そして、よく登った!
明日からどんなふうに生活すればいいのかな~?
普段の生活に戻れるかな?
手すりに両手を置きながら、海を眺めながら湧きだすたくさんの言葉・感情・想いなどをゆっくりとかみしめながら旅を振り返った。

「ゴールしましたね。どうですか?」とここまでともに歩いてきたディレクターの岡本さんからの言葉にすぐに言葉が浮かばなかった。
「ゴールしましたね~ゴールしちゃいましたね…」
「本当にゴールできちゃいましたね~」
「8,000キロ以上歩いてきたんですよね!?」
「不思議と実感がわかないんですよね~」

昨年は最後の最後にドラマがあっただけに、ゴールを迎える気持ちも高まった。
しかし、今回は昨年以上に最後まで気を張り続けてきたが、昨年の様な強烈なドラマがないだけに、ゴールに対する自然とわき上がる気持ちは不思議と強くは無かった。
振り返れば、今回の旅は昨年をも超えるドラマが幾度となくあったのだが、あまりにもこの数分では振り返り整理するには短すぎた。

長い沈黙ののち「本当に本当に、長かったです。ここにたどり着けたことが今でも不思議な感じです。でも、ちゃんと自分の足で歩いてきたことは確かです。今は旅を終えた実感は弱くても、時間が経つにつれて少しずつ強くなっていくと思います。あまりもいろんなことがありすぎた旅だったので、時間が必要な感じですね。
まぁ~自分自身がすごいことをやり遂げた実感がなくても、ゴールやこれまで応援し続けてくれた人たちの人数を見れば、本当にすごいことをやってしまったと気付くんですよね。」
と一つ一つ言葉を選びながら、話す自分がいた。

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今こうして日記を綴りながら、あの時何を話したのかあまり記憶にない。でも、ただ沈黙の時間が長かったことだけはよく覚えている。
そして、撮影班からのリクエストで何か一言叫んで下さいと言われたので、たくさんの人から注目を浴びながら、いまだに慣れない恥ずかしさを感じながら西の空へ落ち始める太陽に向かって「俺はやり遂げたぞ~!!!」と叫んだ。

その後、集まっていただいた応援の方々約150人、一人一人にお礼を伝え、握手と写真撮影に応じた。
全員終えた後にはっとした!あっ一緒に集合写真を撮るのを忘れたのだ。
握手と写真撮影が終わった後も展望台に残っている方々とゴール記念の集合写真をとった。
この間も僕の心は落ち着きどころがなくふわふわとした感じだった。

時間はあっという間に過ぎ、時刻は午後5時を過ぎた。そして、佐多岬には2016年最初の夕日が僕らを赤く染めた。
それを見ながら、「あっ今日が終わる。旅が終わる。」と感じた。
そして、「Next Trip!」と空を指差しながら言葉がこぼれた。
それを聞いていた人たちから「おおお~!!!」と声が聞こえた。
「まぁいつになるかはわかりませんが、また歩きたいですね!」
沈む夕日を背に僕はそう続けた。

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さぁ~次はどんな旅をこの日本で繰り広げようか!まだまだ魅力は無限に広がっている日本で!
約8,000キロ(多分8,100キロほど)、100の山の頂に立ち、3つの海を越えてきた旅は221日と11時間で幕を下ろした。

7カ月以上にも及ぶ旅(挑戦)に数え切れないほどの人たちが注目し、声を出し、見守り続けて下さいました。そして、一緒にゴールまで歩き続けてくれました。
本当に本当に本当に!ありがとうございました!
皆さまも歩みを止めず、次なる旅へ進んでいってください。僕も負けずに歩み続けます。

暗闇の中、8カ月ぶりに愛車のハンドルを握り、アクセルを踏んだ。
次なる旅が始まるまで、しばし現実生活?へ戻ります。

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※宿に着いて車を置いてから、美味しい一杯をいただきました。

 この日記に書かれている場所はこの辺りです